新しい家族

ある日、仕事を終え帰宅するとき、ケータイが鳴っていた。

 

 

 

着信をみるとヨメからである。

 

 

メールもきていた。

 

 

普段ヨメは、あんまりメールをしてこない。

 

 

 

 

メールをしてくる理由は2つ。

 

 

 

『牛乳買ってきて。』

 

 

 

 

『バナナ買ってきて。』

 

 

 

 

そのどちらでもない。

 

 

と直感的に思った。

 

 

 

 

 

電話を掛けなおす手が震えた。

 

 

『陣痛がきたから今から病院へ行きます。』

 

 

キタ━━━ヾ(*≧∀≦*)ノ━━━!!!

 

 

 

私は家路を急いだ。

 

 

 

落ち着け。

 

落ち着け。

 

 

俺のストロングポイントは冷静さだろ。

 

 

自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

家に到着。

 

 

 

当然誰もいない。

 

 

 

長丁場になると想定し、シャワーを浴びた。

 

 

 

その前に洗濯機をまわした。

 

 

 

しかし、洗濯が終了するのを待ちきれず、家を飛び出した。

 

 

 

 

 

病院に到着したのは、夜の8時だった。

 

 

 

 

1階の入院部屋にお母さん(注)と間もなくお姉さんとなる娘がいた。

 

 

(注)

ヨメの母➡お母さん

私の母 ➡おかん

 

 

 

私はヨメのカバンから、母子手帳と腹帯をとり、2階の分娩室へ飛んで行った。

 

 

 

コラコラ。

 

 

病院で走っちゃいかん。

 

 

落ち着け。

 

落ち着け。

 

 

 

廊下で先生にバッタリ会った。

 

 

『あと1時間で産まれるよ。』

 

 

と先生はニッコリ笑って言った。

 

 

なんとぉ(゚ロ゚屮)屮

 

 

想定と違い、短期決戦である。

 

 

 

 

 

分娩室にはいるとヨメがいた。

 

 

 

まだ話をする余裕がある。

 

 

しかし、徐々に苦しみだした。

 

 

 

 

 

こういう時こそオロオロしちゃいかん。

 

 

落ち着け。

 

落ち着け。

 

 

 

私は自分に出来ることをさがした。

 

 

 

 

夏のお産はとにかく暑い。

 

 

 

この日のために買ったアイテムがある。

 

 

ペットボトルにストローが装着できるフタである。

 

 

 

買うときにフタの絵柄をクマさんにするか、ブタさんにするかで、30分ほど悩んだ大事なアイテム。

 

 

 

だが、冷静さを失っていた私は、うまくストローが装着できない。

 

 

 

結局、陣痛で苦しむヨメがストローを装着してくれた。

 

 

 

どこまでも頼りになるヨメである。

 

 

 

 

 

その後は、

 

 

分娩室のエアコンを、コッソリ強風にしたり、

 

 

例のストローで、ヨメにお茶を飲ませたり、

 

 

団扇でヨメを仰いだり、

 

 

ウロウロして助産師さんの邪魔になったり、

 

 

とにかく私は脅威的な活躍を果たした。

 

 

 

 

 

ヨメはなんと、この状況で歩いてトイレへ行った。

 

 

トイレで踏ん張ったら、赤ちゃんが出てこないか心配だった。

 

 

でも大丈夫だった。

 

 

分娩室へ戻ると、ヨメは一段と苦しそうになった。

 

 

 

 

 

 

そして、誕生の瞬間がやってきた。

 

 

 

この時ばかりは祈る。

 

 

 

赤ちゃんが健康に産まれてくれるなら、自分の眼でも腕でもくれてやる。

 

 

そう思った。

 

 

 

私も人並みの親だったらしい。

 

 

 

 

 

5時 陣痛開始

 

 

7時 病院到着

 

 

8時 分娩室へ移動

 

 

9時00分 誕生!

 

 

 

 

可愛い女の子である。

 

 

 

しわくちゃやけど、たまるか可愛い。

 

 

 

超がつく安産。

 

 

 

 

 

 

3歳の長女も、お母さんと分娩室へ駆けつけた。

 

 

 

長女は最初、泣いている赤ちゃんに警戒して近寄らなかった。

 

 

でも10分もしたら、頬っぺたを触ったり、赤ちゃんの匂いを嗅いでいた。

 

 

 

もう仲良しである。

 

 

 

 

 

赤ちゃんをみている長女が楽しそうだった。

 

 

 

赤ちゃんをみているヨメが幸せそうだった。

 

 

だから私も嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

その日、長女はお母さんに任せて、私は病院に泊まった。

 

 

 

安産といえど、身体へのダメージは大きい。

 

 

 

出血と貧血がひどく、その日ヨメは立ち上がれなかった。

 

 

 

 

 

子供は自分以上の存在である。

 

 

自分がボロい服を着ても、子供にはキレイなベベを着せにゃならん。

 

 

 

 

ヨメは自分と同等の存在である。

 

 

もし私が落ちぶれたら、ヨメも一緒に泥をかぶってもらう。

 

 

 

だからこそ、産みの痛みを夫婦で共有できないのは、ヨメに申し訳ないと思った。

 

 

 

 

こればかりは、仕事と育児で挽回するしかない。

 

 

 

 

いっぱい仕事頑張るから、いつか4人で遊園地へ行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に。

 

 

 

 

産まれてきてくれた娘へ。

 

 

私の大好きな言葉を捧げる。

 

 

 

 

ネイティブアメリカンの格言だ。

 

 

 

 

 

 

 

あなたが産まれたとき、

 

 

あなたは泣いていて、周りの人たちは笑っていたでしょう。

 

 

だから、いつかあなたが死ぬとき、

 

 

あなたが笑っていて、周りの人たちが泣いている。

 

 

そんな人生を送りなさい。