長靴

 

 

新学期の初日、4月1日はあいにくの雨だった。

 

 

1歳の次女は、3月まで私が抱っこして保育園へ連れて行った。

 

 

だが、今日からは歩いて登園するのだ。

 

 

 

 

お姉ちゃんのおさがりの長靴を次女に履かせたが、中敷きをいれてもまだブカい。

 

 

 

 

 

 

保育園の駐車場に到着。

 

 

 

雨だが、やはり歩かそう。

 

 

 

抱っこだと、ぬかるみに長靴が落ちる危険がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

次女は私と手をつなぎ、一歩一歩雨のなかを歩いた。

 

 

もう担当の先生が、次女の到着を部屋の前で手を振って待ってくれている。

 

 

地面のぬかるみを長靴で突破していく次女。

 

 

あと10m

 

 

あと5m

 

 

 

次女は一生懸命歩いた。

 

 

 

そこでやはり事件は起きた。

 

 

 

 

最後のぬかるみで、次女の右足の長靴がスポッと脱げた。

 

 

次の瞬間、右足は靴下のまま、ぬかるみにバシャンと着地した。

 

 

 

次女は動じずそのまま歩く。

 

 

 

びしゃびしゃの地面で長靴が脱げても、動じずに歩く。 

 

 

『保育園へ行くんだ。』

 

 

という強い意志が感じられた。

 

 

 

 

 

 

私はというと、慌てて次女の右足を抑えたが、時すでに遅し。

 

 

靴下は、濡れてびしゃんこである。

 

 

 

それでも自分の足で前へ進もうとした、次女の気概は高く評価したい。

 

 

 

 

 

人は、高い山を乗り越えられなくて挫折するんじゃない。

 

 

 

たった5センチほどの段差につまづいて、立ち上がれないのが人間なのだ。

 

 

 

前へ進む意志さえあれば、たいがいはゴールできるのが人生なのだ。

 

 

 

 

 

次女よ。

 

 

人生は晴れの日だけではない。

 

 

つまづく時もある。

 

 

長靴が脱げる時もある。

  

 

 

だが今日のように、自分の足で歩いていくんだ。