特訓

2年くらい前に、長女に自転車を買った。

 

 

それっきりほとんど乗せる機会がなかった。

 

 

 

私は土日もお仕事。

 

 

毎日、仕事で夜に暗くなってから帰る。

 

 

 

 

ヨメもお仕事をしていて忙しいし、休みの日は買い物やら何やら用事がある。

 

 

さらに自転車を買った頃は、次女が赤ちゃんだった。

 

 

たから、長女を自転車に乗せる機会がなかった。

 

 

それからズルズルと2年が経った。

 

 

長女はもう保育園の年長さんだ。

 

 

 

 

結局のところ補助輪つきの自転車を買ってから、長女が乗ったのは23回しか記憶にない。

 

 

23回といえば、私が自分の学習机に座った回数とほぼ同じである。

 

 

 

これはヤバイ。

 

 

今のうちに乗せておかねば。

 

 

補助輪装着でさえほとんど乗せていないので、このままでは補助輪なしで乗れるなんて夢のまた夢。

 

 

『いつか特訓せねば。』という危惧があった。

 

 

 

 

 

 

ある日の水曜日。

 

 

自転車屋さんで、2~3回しか使っていない補助輪を外してもらった。

 

 

その日は私もヨメもお仕事が休み。

 

 

この日を逃してなるか。

 

 

強化合宿である。

 

 

特訓である。

 

 

私『今日、自転車の練習するでっ。』

 

 

と言うと、長女も飛び上がって喜んだ。

 

 

次女のお世話はヨメに任せて、特訓である。

 

 

 

 

 

特訓の場は家の前の空き地。

 

 

 

『長女が泣き言を言っても知らん。』

 

 

『乗れるまでスパルタで練習するぜ。』

 

 

『体育会系で育った父の厳しさを、今こそ教えてやる。』

 

 

と、鼻息荒く始めたのであったが。

 

 

 

 

 

開始わずか5分でヘバッたのは、やはり私であった。

 

 

なんせ中腰になって、自転車を支えて何度もダッシュするのである。

 

 

しかも7月である。 

 

 

 

長女『ほら、お父さんもう一回やるで~。』

 

 

私『はぁはぁ。(°m°;)ちょっと、休憩。』

 

 

長女『お父さん早く早く~ヾ(*´Ο`*)/

 

 

 

 

 

フラフラしながらも、長女は力一杯ペダルをこいだ。

 

 

でも、フラフラしてすぐに足をついてしまう。

 

 

こぐ事よりも、こけた時の怖さが上回っているのだ。

 

 

 

 

だから、柔道ではまず受け身を覚える。

 

 

投げられた時に怪我をしないためと、投げられる恐怖を克服するため。

 

 

だったと思う。

 

 

 

 

 

スキーも一緒。

 

 

ビギナーにはまず正しいこけ方を教える。

 

バランスを崩したときは、体をパタンと横に倒すと足を捻らずにすむ。

 

 

たぶん。

 

 

 

 

長女にはまずコケそうになったら、ブレーキをして、すぐに足を地面に付けるべし。

 

 

と教えた。

 

 

 

これで繰り返し繰り返し練習。

 

 

長女はひたすらペダルをふむ。

 

 

私はひたすら後ろから押す。

 

 

押すというか、腕力で自転車のバランスをとる。

 

 

7月に、走りながら、中腰になって、腕力で自転車を支える。

 

 

これはかなりヘビーな運動である。

 

 

汗が噴き出す。

 

 

 

 

スラムダンクで言うと、試合中の流川君くらい汗だくである。

 

 

その甲斐もあってか、徐々に長女がコツを掴み始めた。

 

 

 

 

スピードが出たほうがフラフラせずに安定すると気づいてきたようだ。

 

 

近所の小学のお姉ちゃんたちも、特訓の様子を見にきた。

 

 

 

 

私『試しにお父さんが手を放すき、自分で漕いでみて。』

 

 

私『最初は3回でっ!よーし!それ~』

 

 

 

いーち、にーい、

 

 

あー惜しい。もう一回。

 

 

とかやっているうちに、10回まで自分でこげるようになった。

 

 

本当は自転車の横で並走しながら、私が片手で自転車を支えているのだが。

 

 

長女はそれに気づかず、支えなしだと思っている。

 

 

子供は自立しているつもりでも、親が支えているものである。

 

 

 

長女『お父しゃん、14回も自分でこげたで~』

 ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ

 

 

私『よし、じゃあお母さんに見せちゃろう。』

 

 

ヨメと次女を広場まで連れてきた。

 

 

 

 

今日一日の成果をヨメにも見せよう。

 

 

私『よっしゃ行くで~。せーの』

 

 

ヨメの前ではフラフラしていたけど、なんとか10回くらいは手放し風でこげた。

 

 

特訓前よりは飛躍的な進歩だ。

 

 

 

 

あとからヨメに

 

 

『自転車屋さんが、練習のときは後ろから押さんほうが良いと言ってなかった?』

 

 

『まずはペダルをこぐより、足で地面を蹴って前に進ませたら良いって。』

 

 

 

Σ(゚д゚lll)ガーン

 

 

全くサッパリこれっぽっちも聞いてなかった。

 

 

 

私はなんでも自己流にはしる傾向があるが、今回もそれがでてしまった。

 

 

まぁいっか。

 

 

次は地面のキックから教えよう。

 

 

私と長女がかいた汗はきっと無駄ではないはず。

 

 

 

『遠回りをした方が、習得に苦労した方が、深く学べる。』

 

 

というのはカイロプラクティックの講習でよく聞く言葉である。

 

 

 

私は人一倍、基本の習得に時間がかかる方だ。

 

 

でも、試行錯誤した時間が長い分、応用は効く方だ。

 

 

たぶん。

 

 

 

 

その日の夜。

 

 

 

長女が私の枕元にきてささやいた。

 

 

長女『お父さん、自転車押してくれてありがとう。』

 

 

 

 

泣かせること言うぢゃねーか。

 

 

自転車くらい押してやる。

 

 

大人になって、いつか迷いがでたときは、背中も押してやるさ。