運動会 2023

運動会の3日ほど前。

 

 

長女『おとーさん、速く走る方法教えて。』

 

 

うーむ。

 

 

それは私が現在最も研究している分野である。

 

 

100m走において後半減速してしまう場合、足の接地位置がより前方になり、離地位置が体に近くなる。それとともに後ろに流れる脚を前に引き戻す動作が遅れ、足関節の発揮するパワーが著しく低下する。そのため100m走において速度低下を防ぐには、足首によるパワーの発揮、後ろに流れる脚を前に引き出す股関節屈曲の持久筋が重要である。

 

400m走においては、後半は前半と比較して、腿上げ角度や回復脚の振り出し角度が小さくなり、接地中の蹴り出し時の膝の伸展角度が大きくなることによって、脚全体後方スイング速度が低下するという特徴がある。そして、接地瞬時には膝や足首の角度が大きくなり、接地位置がより体の前方になることが分かっている。

 

日本のトップ選手は学生選手と比較して、接地中の足関節が発揮する力が約4倍、後ろに流れる脚を前に引き出す場面での股関節屈曲力は約2倍の値を示してる、というデータもある。

 

具体的なトレーニング法だが、膝や背中を丸めずに、足首の筋力だけでジャンプする足首ジャンプ。これは足関節のパワー強化。

両足に輪っかのチューブを巻いて、立ったまま片足を膝蹴りのように引き上げる、大腿四頭筋・大腿筋膜伸筋の筋力アップ。

 

この3つは私も今シーズンの課題にしていて、週4回行っているが、かなり効果があると実証済みである。

 

 

 

 

 

 

しかし、長女が聞いているのは多分トレーニング理論の話ではないと思う。

 

 

ズバリ、3日後の運動会で、1番になる方法だろう。

 

 

親子だから、テレパシーのように長女の気持ちが分かるのだ。

 

 

 

 

 

今から大腿筋膜張筋を鍛えるには時間がない。

 

 

私はすぐに実践できそうなコツを教えた。

 

 

父『ヨーイ・スタートの時は、体を前に倒して加速するがデッ。』

 

 

父『最後の直線は大きく腕を振りヨッ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

長女にとって、小学校6年間の集大成。

 

 

かけっこは1番で終わりたいところ。

 

 

しかし、学校でトップクラスに速いAちゃんと同じ組になってしまったそうな。

 

 

今までの練習では一度も勝てなかった。

 

 

だが、運動会前日の練習では初めて勝ったらしい。

 

 

 

 

 

長女曰く

 

『前の日やき、体力温存のためにAちゃんはゆっくり走ったがで。』

 

 

『明日は本気でくるはず。』

 

 

 

 

 

 

 

 

運動会前日の夜。

 

 

私が2階へ行ったとき、布団にはいって寝ていたはずの長女が私に声をかけてきた。

 

 

長女『おとーさん、速く走る方法をもっと教えて。』

 

 

長女が勝ちたい気持ちが、強く伝わってくる。

 

 

父『足の裏でベタッて着地するんやなくて、足の裏の前半分で地面を蹴るように走ってみいや。』

 

 

父『ほんなら足の回転が速くなるがでっ。』

 

 

 

 

 

 

うーむ。

 

 

もっと良いアドバイスはないか。

 

 

もっと分かりやすく、目に見えて早くなる方法を伝授しなければ。

 

 

朝にパパッと伝えて、すぐ実践できるような簡単なコツはないか。

 

 

一晩考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。

 

 

あまりごちゃごちゃ言ったら余計にダメなので、教えたことを復習するだけにした。

 

 

長女の部屋に行くと、いつもよりピシッと布団が畳まれてあった。

 

 

今日が長女にとって、勝負の日なのだ。

 

 

 

 

私も高校の陸上の試合のとき、ナーバスになって服を綺麗に畳んだり、部屋をきれいにして家をでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運動会が始まった。

 

 

まずは小学3年次女のかけっこが始まった。

 

 

次女は3番だった。

 

 

 

 

 

公園で走っている時の方が、速い気がしたが。

 

 

練習ではビリだと言っていたから、頑張って力を出し切ったんだと思う。

 

 

相変わらず1位でも3位でも、ニコニコ走っていたから良かった。

 

 

次女はかけっこではなく、ダンスに全精力を注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

さて、6年生の長女の出番。

 

 

ヨーイ・バァン。

 

 

長女が勢いよく飛び出した。

 

 

インコースの取り合いはかなり熾烈だった。

 

 

 

 

 

保育園とか低学年のときは、競り合いを避けて相手に譲る場面もあったけど、高学年になって長女は闘うようになった。

 

 

長女がインコースを獲ったけど、カーブにはいってもまだ激しく順位が入れ替わっていた。

 

 

最期の直線、長女がトップに躍り出た。

 

 

作戦どおり、腕を大きく振っている。

 

 

 

 

 

ライバルの猛追をしのいで、トップでテープを切った。

 

 

ライバルに競り勝った。

 

 

 

 

 

 

 

よくやった。

 

 

1番になった事より、長女が強くなったのが嬉しかった。

 

 

 

 

 

その日の晩、みんなで焼き肉に行って、たらふく食べた。