8月某日。
小学校5年の次女が、誕生日をむかえた。
誕生日プレゼントのリクエストはコピックペンであった。
コピックペンとは、発色の良い絵の具のようなペンだ。
何回か重ねて塗れば、色に濃淡が加わる。
次女は絵を描くのが大好きなので、これに決まった。
私は他に、マジックグッズを買ってきた。
私がマジックを披露するのではない。
次女がマジックを家族に披露する。
マジックで人を笑顔にする、という楽しい体験をしてもらおうという試みである。
誕生日の前日。
私は次女にマジックの仕込みを行った。
マジック好きの次女はノリノリである。
『ほらここに、よく跳ねるボールがあります。』
『これのボールが跳ねた時に、とってみてください。』
と言いつつ、手の中で跳ねないボールに持ち替える。
ボールといっても、スーパーボールの大きさだ。
次に落とした硬いボールは、『ゴトッ』と跳ねない。
というマジックだ。
こんな器用なこと、カイロプラクターにしかできない。
小5の小さな手でできるのだろうか。
試してみるとなかなか難しそうなので、両手を使ったやり方を伝授した。
お次はカードマジック。
カードAには、赤、黄色、緑の3色のマークがある。
カードBは無地。
『こちらに2枚のカードがあります。』
『魔法を唱えると、このカードAの緑が、こちらのカードBに移動します。』
『ワン、ツー、スリー、ほれー』
というやつだ。
これも見せ方を仕込んだ。
翌日。
次女のお誕生日。
晩御飯を食べて、
ケーキを食べて、
プレゼントを渡して、
マジックは次女に託して、
私は風呂にはいった。
リビングの方から、『キャッキャッ』と笑い声が聞こえてくる。
うまくいったに違いない。
マジックが失敗していても、家族が沸いたから成功だ。
お風呂できく、家族の笑い声が心地よかった。