マラソンしようぜ

ある日、友人から突然電話がかかってきた。

 

 

友人『マラソンしようぜっ!』

 

 

坂本『どした急に?』

 

 

 

 

友人『マラソンするぞっ!』

 

 

坂本『どした?どした?』

 

 

 

 

友人『マラソンしよーぜー。』

 

 

坂本『なんかあったか?』

 

 

 

 

友人『高知マラソンでよーぜー。』

 

 

坂本『42キロかぁ。』

 

 

 

 

友人『やろーぜ。な?』

 

 

坂本『うーん。考えとく。』

 

 

 

 

友人『やろーぜ。』

 

 

坂本『善処します。』

 

 

 

 

友人『やろーぜ。やろーぜ。』

 

 

 

 

 

 

 

みなさんお気づきだろうか。

 

 

友人は『やろーぜー』しか言っていない。

 

 

凄まじい語彙力だ。

 

 

そして、会話は一切進んでいない。

 

 

しかし、彼はこちらが『うん』と言うまで電話を切らない。

 

 

 

 

 

 

そこで、

 

 

『前向きに検討します。』

 

 

『善処します。』

 

 

と政治家的な表現を用いて言明を避けてはいるが、彼は一切ひるまない。

 

 

一切だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでも、ダイエットするために走りたいそうだ。

 

 

マラソン完走という目標を掲げれば、頑張れるそうだ。

 

 

そのための道連れを探していて、私が適任だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

マラソンかぁ。

 

 

うーん。

 

 

 

 

マラソンねぇ。

 

 

ふむふむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は去年まで、マスターズという40歳以上のおじさん限定の陸上の大会にでていた。

 

 

種目は短距離の400mにでていたので、ここ数年ジョギングはしていない。

 

 

 

 

 

レースに出場となると、気持ちが全部そっちに向いてしまう。

 

 

今は東京へ毎月勉強に行っているから、とてもそんな余裕はない。

 

 

だから当面の間、マスターズは封印する予定であった。

 

 

でもマラソンとなると、勝負というより完走が目的となる。

 

 

 

 

 

 

 

これならお気楽に参加できるのではないか。

 

 

でも42キロはそんなに甘くないだろう。

 

 

 

 

 

 

友人には

 

 

『今は忙しいから断言できない。でも前向きに善処します。』

 

 

と言って電話を切った。

 

 

少し走ってみて、自分の気持ちがマラソンに向くか試したかった。

 

 

 

 

 

 

私は『やる』と言っておいて、途中で『やっぱ辞めた』というのはイヤだ。

 

 

有言不実行はカッコ悪い。

 

 

無言実行が一番カッコいい。

 

 

 

ちなみにマスターズに出ていたことは、この友人には言っていないし、家族以外は言っていない。

 

 

 

 

 

 

 

自分の気持ちが固まるまで、明言は避けたい。

 

 

でも、気持ちはなんだかワクワクしている。

 

 

 

 

きっと誰かに誘われなかったら

 

 

『高知マラソンに出場する。』

 

 

とはならなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

 

友人から電話がかかってきた。

 

 

『どう?決まった?やるやろ?』

 

 

 

 

 

私に似て、せっかちななつだ。・・・