2018年

6月

09日

幻のスリッパ

 

 

スリッパで一番大事なのはサイズである。

 

 

デザインとか素材じゃない。

 

 

サイズが大事なんだ。

 

 

 

生きていくうえで大事なのは、一歩踏み込むこと。

 

 

 

 

 

 

 

今回、スリッパを買い替えようと思ったきっかけがあった。

 

 

ある女性のお客様が言った。

 

 

『先生、次回からマイスリッパを持って来て良いですか?』

 

 

他の方とスリッパを共有することに抵抗がある人もやはりいるのだ。

 

 

 

 

私も衛生面はかなり気にしてはいる。

 

 

でも、女性の方が私より衛生面での意識は高い。

 

 

自分の想像を超えたところで、お客様が不便や不快に感じている。

 

 

衛生面に限らずだけど、お客さんの意識を上回っていかねばならない。

 

 

 

 

 

歯医者さんみたいに、抗菌のシューズボックスを置くほどの予算もスペースも場所もない。

 

 

『せめてスリッパは抗菌にしよう。』

 

そう思った。

 

 

早速スリッパを探した。

 

 

アマゾン、楽天、店舗、カタログ、アスクル。

 

 

探しまくって、インターネットで手作りの抗菌Lサイズのスリッパを購入。

 

 

Mサイズだと男性には小さいとレビューに書いてあった。

 

 

到着すると、確かにシンプルながらも品があり丈夫そうだ。

 

 

私の足にピッタリ。

 

 

ピッタリ?

 

 

ある不安がよぎった。

 

 

 

 

私の足は27.5センチ。

 

 

男性のなかでも大きい方だ。

 

 

これは女性には大き過ぎるでないんかい?

 

 

それからは、女性客がスリッパを履く度に、気になってフィット感を確かめた。

 

 

やはり、多くの女性には大きいようだ。

 

 

履いた時に歩きにくそうだ。

 

 

なんだかブカブカしている。

 

 

 

 

 

嫁さんにも履いてもらった。

 

 

『別に大丈夫やない?』

 

 

と言ってくれたけど、私の胸はざわついたままだ。

 

 

色違いのMサイズも購入して、サイズ別に置いとけば良いと思ったあなた。

 

 

甘い。

 

 

以前やったがうまく機能しなかった。

 

 

お客さんはそこまでスリッパを気にしていない。

 

 

足のデカイおじさんが、Mサイズを履いて足がブリブリにはみ出していることなんて日常茶飯事。

 

 

私はもうそれが気になってしょーがないのだ。

 

 

 

 

だから

 

『サイズは統一したものを置く。』

 

と固く心に決めたのだ。

 

 

 

 

 

手作りのスリッパを購入してから3週間。

 

 

大事件が起きた。

 

 

 

スリッパの先の余った部分で、つまづいてコケそうになった人がいた。

 

 

転倒したのではない。

 

 

つまづいただけだ。

 

 

これは私にとっては大事件だ。

 

 

お客様が怪我をしそうな要素を極力排除する。

 

 

これは鉄の掟。

 

 

 

 

 

例えばポール式のハンガーフックなんかも置かない。

 

 

お客さんの目を突くかもしれない。

 

 

そこまで考えるのが客商売なのだ。

 

 

お客さんがつまづくスリッパなんて、有り得ないのである。

 

 

 

 

 

私は経営者としての決断を下した。

 

 

『別のスリッパを購入する。』

 

 

 

 

 

もうスリッパのアテはある。

 

 

自分の行きつけの歯医者のスリッパだ。

 

 

実は何年も前から、あのスリッパを探していた。

 

 

今回もあのスリッパを探した。

 

 

でも見つからなかった幻のスリッパ。

 

 

 

 

 

歯医者だからもちろん抗菌。

 

 

色は明るさをやや抑えたオレンジ。

 

 

デザインも古い病院にあるスリッパとは違い、スタイリッシュだ。

 

 

そして、特筆すべきはサイズ。

 

 

足がデカめの私が履いても問題ない。

 

 

女性が履いているのを見ても、スカスカせずに歩きやすそうだ。

 

 

 

 

 

万人に合うサイズなんて有り得ない。

 

 

でもこのスリッパならストライクゾーンがかなり広いはず。

 

 

今回は何が何でもこのスリッパを買う。

 

 

 

私は『詰め物が外れそう』だとかなんとかイチャモンをつけて、歯医者へ乗り込んだ。

 

 

そして受付で意を決して、このスリッパをどこで購入できるか聞いた。

 

 

受付の人は苦笑いしながら教えてくれた。

 

 

スリッパはその日のうちに注文した。

 

 

 

 

数日後にスリッパが到着した。

 

 

店内を鮮やかに彩るビタミンカラー。

 

 

清潔感と気品を漂わせる抗菌レザー。

 

 

私の足も女性の足も、美しく包み込む上質なフォルム。

 

 

男性も女性もむろんつまづく人は皆無だ。

 

 

 

 

恥ずかしいとか思わず、もっと早く歯医者でスリッパの出所を聞けば良かったのだ。

 

 

一言聞くだけで、こんな簡単に幻のスリッパが手にはいった。

 

 

 

 

ネットやカタログで何時間も探すのが努力じゃない。

 

 

歯医者で勇気をだしてたった一言聞くのが努力だったのだ。

 

 

 

人間はキッカケがないと、もう一歩踏み込めてないんだな。

 

 

 

 

 

成功している人というのは、毎日出し惜しみなく『もう一歩』踏み込んで生きてきたんじゃないか。

 

 

 

私もそうありたい。