ゴッドハンドへの道

 

2月某日。

 

 

私は東京にいた。

 

 

今まで6年間勉強してきた新橋ではなく、今回は蒲田である。

 

 

また新しい勉強が始まる。

 

 

 

 

 

 

6年前に新橋へ初めて行った時は、気が重かった。

 

 

新しい勉強を始めるのは、膨大なエネルギーと時間を要するからだ。

 

 

だが、今回は子供が遠足へ行く前のようにワクワクしている。

 

 

あの頃より余裕があるということなのか。

 

 

誕生日だから、今日から生まれ変わるつもりで勉強しよう。

 

 

 

 

 

 

東京ではみんなマスクしているそうだ。

 

 

花粉、新型ウィルス、新型肺炎が猛威を奮っている。

 

 

マスクが必要だが手に入らない。

 

 

 

 

Amazonでは料金が10倍以上に跳ね上がっている。

 

 

今シーズンからマスクが金粉入りになったのだろうか。

 

 

 

2000円の表示であったからクリックすると、送料が18000円になっている。

 

 

今シーズンから、製造元の社長がロールスロイスでマスクを家まで届けてくれるようになったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

ドラッグストアに行くと、子供用のアンパンマンマスクしかないと言われた。

 

 

うーん。

 

 

さすがに初めての勉強会へアンパンマンのマスクで行くと、誰もペアを組んでくれない気がする。

 

 

せめてキティちゃんだったら良かったのに。

 

 

なんとか、金銭的に手が届くマスクをネットで購入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の会場は東京の蒲田。

 

 

初めて参加するセミナー。

 

 

テーマは頭蓋骨と脳脊髄液の調整法。

 

 

難易度は超絶に高い。

 

 

 

 

 

 

実はこのテクニックは、数年前に勉強したことがある。

 

 

本の分厚さは広辞苑くらいで、値段は数万円。

 

 

110ページずつ理解しようと思ったが、途中で挫折した。

 

 

サッパリ綺麗さっぱり、清々しいほど解らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回は違う。

 

 

セミナーのDVDを手に入れた。

 

 

3巻のDVDをルーズリーフに書き留めて熟読した。

 

 

ルーズリーフは50枚になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『初めてでこんなに出来る奴がいる。』

 

 

『高知から天才が現れた。(゚ロ゚;ノ)ノ

 

 

 

そう思われたくって、鼻血がでるほど予習をして行った。

 

 

勉強が苦手な私が、天才キャラでチヤホヤされる妄想をしながら、脳を騙して一生懸命勉強した。

 

 

 

 

 

 

6年前は人生を懸けるつもりで、セミナーに参加した。

 

 

今回も同じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

今まで6年間通った新橋のセミナーでは、

 

 

『ほら、あのポンコツだった坂本さんでさえ、コツコツ頑張って出来るようになったよ。』

 

 

『だから努力すれば誰でも出来るよ。みんなも頑張れ。』

 

 

という扱いだった。

 

 

 

 

のろのろコツコツな亀さんキャラだ。

 

 

そんな泥臭いのはもうイヤだ。

 

 

 

 

 

 

今回は天才キャラで行こうと胸に誓っていた。

 

 

イメージは、ブッチギリでゴールテープを切る兎さんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果は予想通り。

 

 

ポンコツスタート。

 

 

 

 

どうやら、あの広辞苑の本を理解している前提でセミナーは始まっているようだ。

 

 

頭蓋骨縫合の正確な位置

 

 

内臓の神経反射

 

 

筋肉の神経反射

 

 

人体の気のめぐり

 

 

病理学・生理学

 

 

などを完璧に理解する必要がある。

 

 

 

『99点は0点と同じ。』

 

 

『100点じゃないと頭蓋骨の調整はできない。』

 

 

と、講師の先生は15点の私に言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

私は一番前の席に座り質問をぶつけた。

 

 

講師の先生はとても丁寧に説明してくれたが、高度過ぎて清々しいほど私には理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

6年前と同じだ。

 

 

ゲンナリするほど、自分が無知だというのがよく分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

でもいい。

 

 

ここから巻き返すのが坂本流ってことだ。

 

 

 

 

見えてきたのは絶望ではなく希望。

 

 

まだ自分にはこんなにも伸びしろが残されている。

 

 

 

 

今日がゴッドハンドへの第一歩だ。